歯科技工所との連携について
質の高い歯科治療を患者さんに提供するために重要なことは数多くありますが、その中の一つに歯科技工士さんとの連携を密に行うということが挙げられます。
欠損治療や修復治療において我々歯科医師の仕事はほとんどが歯を作るための下準備であり、最終的に口腔内で機能させる構造物の完成度は技工士さんの腕によって決まります。だから歯科技工士さんの技術と相互のコミュニケーションはとても大事です。

患者さんは60代女性、上顎6前歯欠損に対してインプラント治療を希望されました。写真はガイデッドサージェリーによってインプラントを埋入しているところです。

3ヶ月後に2次手術を行い軟組織が落ち着いたところで印象採得を行います。

ヒーリングアバットメントを外すとインプラント本体が見えます。

印象用ポストを装着し、クローズドトレー法により印象します。

完成した上部構造、この時粘膜貫通部の形態が細いことが気になります。本来はプロビジョナルレストレーションによって軟組織の形態をコントロールするのが一般的なんですが、私はレジンによる軟組織への為害作用とプロビジョナルレストレーションによって形成された軟組織はファイナルレストレーションとの密着性が失われると考えているため、あえて軟組織の形態をコントロールすることなくファイナルレストレーションを装着します。

ただこの方法は実際の口腔内に触れていない技工士さんからすると理想的な形態がイメージしにくいようで、出来上がってきた上部構造を装着すると適合は完璧なのですが、歯頚部付近に空隙が存在しスカスカになっています。

申し訳ないですがこちらの理想とするイメージを改めて説明し、再度作製をお願いしました。 写真は新たに作製された上部構造、ネック部分がだいぶ太くなっているのが分かるでしょうか。

歯科技工所「青木セラミック」のラボは稲城駅のすぐ近く、歩いて5分もかからない場所にあるので、容易に密な連携やコミュニケーションが取れ、常に精度の高い技工物を提供してくれる私にとってなくてはならない存在です。

口腔内に装着されてから1週間後のファイナルレストレーション。インプラント上部構造と軟組織が最適な調和を得ることで、審美的にも機能的にも精度の高い治療結果が得られたと思います。 インプラントの上部構造は通常の補綴物とは比べ物にならないくらいの精度が要求されますので、歯科技工士さんの技術の差がはっきりと現れます。