偶然同じタイミングで9年ぶりに来院された2人の患者さん
2015年に歯牙移植を行い治療終了後1度も定期検診を受診することなくの再来院です。
大きな問題が起きていなければいいなと思いながらの診察ですが、今回はその2つの症例を歯牙移植の術式を交えながら紹介します。
症例1
2015年のパノラマX線写真です、左下7番が根管治療途中で3年以上放置していたため保存不能になり、その後ろには横向きになった8番があります。
口腔内写真、7番は崩壊していて保存不能です。
7番抜歯と同時に8番も抜歯し7番の抜歯窩に挿入固定します。
術直後のパノラマX線写真
術後3週間で根管治療を行います。
根管充填後のパノラマX線写真
金銀パラジウム合金のクラウンを装着、それ以外の歯の治療も全て完了しますが、その後9年来院が途絶えます。
9年後の再来院時の口腔内写真です、金銀パラジウム合金は咬合によって摩滅しているのが分かります。
2024年のパノラマX線写真、歯根は強固な骨に支えられ無事に問題なく機能しています。
症例2
2015年のパノラマX線写真です、左上5番が永久歯の先天性欠損のため乳歯が残根状態で残っています。
口腔内写真、保存は不可能なので乳歯を抜歯し、左上8番の移植を計画します。
左は保存不能の乳歯、右が移植する親知らずの8番です。
乳歯の抜歯窩は浅いので骨内をドリリングして8番の歯根が収まるように十分な骨削除を行います。
隣接面もピッタリ合うように調整し固定を行います。
術直後のパノラマX線写真
術後3週間で根管治療を行います、写真は根管充填後の写真です。
コンポジットレジンを充填、 この当時EEデンタルさんの動画を見よう見まねで裂溝にステインを入れたりしています。ただ直後に顎関節症状改善のため3番から7番までバイトアップすることになりコンポジットレジンはやり直しています、ちなみにコンポジットレジンはkerr社のPremiseを使用。
すべての治療が終了した後、来院は途絶え9年ぶりに再来院されました。 レジンの一部が少し欠けている程度で順調に経過しているようです。
2024年のパノラマX線写、移植した歯牙はしっかりと骨に生着し無事に問題なく機能しています。
開業して18年が経ち、10年経過またはそれ以上の経過症例がずいぶん多くなりました、このように安定した口腔内が維持されているのを見るたびに歯牙移植に限らずインプラント治療など私が歯科医師になってから26年、地道に自分自身が信じて歩んできた道や目指してきた方向性に改めて間違いはなかったと思えることが増えました。
また要所要所で撮影した口腔内写真をレントゲンのサーバー機に保存することで、カルテだけでは記録しきれない患者さんの口腔内情報を瞬時に引き出せることが臨床の精度を高めることに大きく役立っていることを実感します。
ただ歯科医院で行う定期検診と歯石などを取り除くクリーニングはお口の健康を維持するためにとても重要なので最低でも1年に1回くらいは来院してくださいね。