上顎洞底を挙上する
今回は以前からまとめてみたいと思っていたテーマの一つ「上顎洞底の挙上について」
インプラントにおいて困るのは骨量が少ない部位への埋入です
特に上顎臼歯部は直上に上顎洞という空洞があり、インプラントを埋入するために十分な骨量を確保できない場合が多くあります
そのため上顎洞に近接した部位にインプラントを埋入する場合、上顎洞底部を挙上し必要な骨量を獲得する必要があります
この上顎洞底を挙上する方法として、大きく分けて以下の二つの方法があります
1)サイナスリフト(上顎洞底挙上術)
2)ソケットリフト
サイナスリフトとは骨を切削し上顎洞に窓を開け、上顎洞粘膜(シュナイダー膜)を上顎洞から剥離挙上し、できたスペースに骨補填材を填入する骨造成法で、側方から骨開窓する方法と垂直方向から骨開窓する方法とがあります。
次にソケットリフトとはインプラントを埋入するためのドリル孔から骨補填材を填入しオステオトームという器具を使って上顎洞粘膜(シュナイダー膜)を剥離挙上していく方法です。
この方法はサイナスリフトに比べ洞底部挙上量は少ないのですが、外科的侵襲が少ないので患者さんの負担はより少なくて済みます。
オステオトームにてソケットリフトした症例
オステオトームで行うソケットリフトは術中に顎骨に強い衝撃を加えなければいけないので、患者さんにとっては大きな負担となっていました
そこで当院では2年ほど前からリフテイングドリルという特殊な形態をしたドリルで行うソケットリフトを行っています
これにより洞底骨に加わる衝撃が無くなり、患者さんの苦痛は大幅に改善されました、なおかつ洞底粘膜を傷つけることも無くなり大変重宝しています
なので最近はオステオトームを使用することは皆無となってしまいました
参考:リフティングドリル
リフティングドリルを使用した症例1
リフティングドリルを使用した症例2
歯根破折を起こすと保存することはほぼ不可能と言えます、そして欠損した歯の咬合圧負担を残存歯に依存する治療法は、さらなる咬合の崩壊を招くことになると考えます、そのような負のスパイラルを食い止めるために現在の歯科医療においてインプラントとそれに伴う骨造成術は必要不可欠であると言えるでしょう。